ファーストペンギンとは、新たな分野への挑戦に意欲的な姿勢を有する人を指す用語です。もともと米国で多く使われていた用語ですが、日本では朝ドラの影響で広く浸透し、現在はビジネス分野を中心に使用されています。
ファーストペンギンは重要な役割であり、ファーストペンギンとして動くことにはさまざまなメリットがあります。一方で、リスクもあるため注意が必要です。
本記事ではファーストペンギンについて、メリット・デメリット、ファーストペンギンになる方法などを解説します。
ファーストペンギンとは
はじめにファーストペンギンの意味や語源、似た用語との違いについて取り上げます。
新たな分野へ挑戦するベンチャー精神の持ち主
ファーストペンギンとは、新たな分野に先陣を切って挑戦する、ベンチャー精神の持ち主を意味する用語です。企業内の一個人ではなく、企業全体を指すケースもあります。
新規市場・新分野にチャレンジした人や、スタートアップ企業の創立者に対して使われることが多いです。
また新たな分野へのチャレンジにより、結果として大きな利益を得た人も、ファーストペンギンと呼ばれます。単にベンチャー精神を持つ人の呼称としてだけでなく、勇敢さに対する敬意を示すための言葉としても使われています。
ファーストペンギンの語源・由来
ファーストペンギンはその名のとおり、ペンギンの習性に由来する用語です。
ペンギンは集団で行動する生き物です。そして、ペンギンの食料である魚がいる海の中には、オットセイやシャチなどの天敵となる生き物が多く存在します。多くのペンギンは海の様子を伺うだけで、実際に飛び込もうとはしません。
そんな敵がいる恐れのある海に向かって、一羽のペンギンが先陣を切って飛び込みます。その様子を見て、他のペンギンたちも海に向かって飛び込んでいきます。
このように、リスクの存在を知りながら勇敢に飛び込む最初のペンギンの姿になぞらえて、強いベンチャー精神を持つ人をファーストペンギンと呼ぶようになりました。
参考:ファーストペンギンとは | 人事用語集・辞典 | 人事のプロを支援するHRプロ
パイオニアとの違い
パイオニアは先駆者を意味する用語で、何かを最初にはじめた人を意味します。新規市場や分野を開拓した人・企業の呼称です。
ファーストペンギンも新たな分野へ挑戦した人を指しますが、新規開拓をしたか否かよりも、ベンチャー精神の有無を重視します。またベンチャー精神・挑戦への意欲により、大きな利益を得た人もファーストペンギンと呼ばれます。
パイオニアは先駆者としての結果、ファーストペンギンは意欲や姿勢を重視した呼称です。
セカンドペンギンとの違い
セカンドペンギンはファーストペンギンの次、すなわちリスクの小ささを確認した後に新しい分野へ参入する人・企業を意味します。
ファーストペンギンの存在だけでは、市場の継続や成長は見込めません。市場をより発展させるためには、ファーストペンギンに続くセカンドペンギンの存在が必要です。
セカンドペンギンはファーストペンギンという事例から学習できるため、比較的新たな分野にも低いリスクで参入できます。ただし安全性が高い一方で、ファーストペンギンほどの大きな利益は得にくい立ち位置です。
ファーストペンギンになるメリット
ファーストペンギンになるメリットとして、主に以下の3つがあげられます。
- 先行者利益を得られる
- 注目を集められる
- 市場での優位性を獲得しやすい
先行者利益を得られる
ファーストペンギンは、先行者利益を得られる立ち位置です。先行者利益とは、新たな市場・分野へ最初に参入することで得られる利益を指します。先行者利益の例は以下のとおりです。
- 競合他社が存在しない状態のため価格競争を回避できる
- 市場における代表的な存在になれる
- 消費者や投資家など、外部関係者へ強く印象づけられる
先行者利益の獲得は参入直後だけでなく、その後の事業展開を続けるうえでも大きなメリットとなり得ます。ファーストペンギンになれば必ずしも安泰とは限りませんが、その後の事業展開で有利となる可能性が高いです。
注目を集められる
ファーストペンギンは注目を集めやすい点も大きなメリットです。
新商品・新サービスの成功率を大きく左右する要因のひとつに、注目度の高さがあげられます。たとえ良いものを開発できても、知ってもらえなければ誰も購入・利用せず、利益は得られません。そのため、多くの企業では注目を集めるために宣伝活動を行いますが、広告宣伝には大きなコストがかかります。
しかしファーストペンギンは、新たな分野への挑戦ということで、特別な宣伝活動をせずとも自然に注目が集まりやすいです。そのため広告コストを小さくおさえながらも、十分な宣伝効果が期待できます。
市場での優位性を獲得しやすい
ファーストペンギンは競合他社が存在しない状態で市場に参入するため、市場での優位性を獲得しやすいです。
参入した市場・分野で高い知名度を得られます。競合他社がいない状態でどんどん力をつけていくことも可能です。ファーストペンギンの成功事例を見て、セカンドペンギンなど新たな市場参入者が増えていくでしょう。
そのような中でファーストペンギンは、すでに市場でのポジショニングが完了し、優位性を獲得している状態が十分に起こり得るのです。
もちろんファーストペンギンが確実に首位となるわけではありませんが、市場での優位性を獲得しやすいポジションであることは事実です。
ファーストペンギンのデメリット
ファーストペンギンとしての活動で得られるのはメリットだけではありません。以下のようなデメリットも存在します。
- リスクが高い
- 経営者としての手腕が問われる
リスクが高い
ファーストペンギンの懸念点はリスクの高さです。ファーストペンギンならではのリスクとして、以下の2点があげられます。
- 参考にできる事例がない
ファーストペンギンは未開拓、すなわち他者が参入した前例のない市場・分野に参入します。したがって参考にできる事例がなく、対策が難しい点がリスクです。 - 結果が伴わない恐れがある
ファーストペンギンとして果敢に挑戦したものの、消費者に受け入れられない、市場での優位性が確立できないケースもあります。ブルーオーシャンに見えるからといって、参入によって必ず良い結果が出るとは限りません。
ハイリスクハイリターンな手法といえるでしょう。
経営者としての手腕が問われる
経営者の負担が大きくなりすぎる点もデメリットです。ファーストペンギンには参考にできる事例がありません。判断材料が少ない中で道を拓くには、経営者としての手腕が問われます。
成功するか失敗するか、市場でのポジショニングを獲得できるかなどは、他の市場・分野に比べて経営者の力に大きく左右されるでしょう。
参考:ファーストペンギンとは?そのメリットやデメリットについて解説する | オンライン研修・人材育成 – Schoo(スクー)法人・企業向けサービス
ファーストペンギンになるには
ファーストペンギンになるためにおさえたいポイントとして、以下の2点があげられます。
- ベンチマークを実施する
- 最新情報や技術に触れる
それぞれ詳しく解説します。
ベンチマークを実施する
ファーストペンギンになり成功をおさめるには、ベンチマークの徹底的な実施が必要です。ベンチマークとは指標や基準を意味する用語で、具体的には以下のような活動が求められます。
- 市場における基準や傾向を調査する
- ファーストペンギンに値する選定対象を決める
- ベンチマークとして決定した人・企業と自らを比較し、必要に応じて改善を進める
ベンチマークは現状分析を進めるうえで欠かせません。自社がファーストペンギンになり得るかの分析や、ファーストペンギンになるための対策などを実施するためにベンチマークが求められます。
最新情報や技術に触れる
ファーストペンギンになるには、日頃から最新情報や技術に触れるような意識・姿勢も必要です。
ファーストペンギンとして地位を獲得した事例には、最先端のIT技術や新たな手法を駆使したケースも多くみられます。活用できる技術・スキルの幅が広ければ、選択肢も増えていきます。
新たな市場・分野への参入には、これまでにない技術が求められる可能性が高いです。選べる道を増やすためにも、情報収集や技術力の向上に努める必要があります。
ファーストペンギンの事例
最後に、ファーストペンギンとして成功をおさめた事例を紹介します。今回は以下の3人を取り上げました。
- スティーブ・ジョブズ
- 三木谷浩史
- マーク・ザッカーバーグ
それぞれの事例について詳しく解説します。
スティーブ・ジョブズ
スティーブ・ジョブズはアメリカの実業家であり、Apple社の共同設立者の一人です。
個人向けコンピューターという分野のファーストペンギンとして知られています。かつてコンピューターは企業・組織のみで使うものであり、個人が所有するという考えはありませんでした。
しかし彼は、コンピューターの大量生産・大量販売に乗り出したうえ、「iPhone」「Mac」「iPod」「iPad」などさまざまな製品を誕生させました。
いまやApple社はシリコンバレー、そして世界を代表する大企業となっています。
三木谷浩史
三木谷浩史は日本の実業家で、楽天グループ株式会社の創業者です。
楽天グループが運営する楽天市場は、日本で最初に開設された店舗主体のECサイトといわれています。当時はインターネットで商品・サービスを購入するという考えが広まっていませんでしたが、そんな中でECサイト事業にファーストペンギンとして参入しました。
楽天グループはモール型ECサイトとしての圧倒的な地位を確立し、ほかにもネット銀行や保険など、さまざまな事業で成功をおさめています。
マーク・ザッカーバーグ
マーク・ザッカーバーグはアメリカの実業家・プログラマーで、Facebookの創業者兼会長兼CEOです。
Facebookは世界最大規模のソーシャルネットワーキングサービスとして優位性を確立しています。また当時売上高がほとんどなかったInstagram(インスタグラム)を10億ドルで買収するなど、さまざまな挑戦を成し遂げています。
先見性や感性を重視し、道を切り開くようなビジネス展開を進めた事例です。
まとめ
ファーストペンギンは強いベンチャー精神・挑戦心のもと、新たな分野へ参入していきます。市場での優位性を獲得しやすいなどのメリットを持つ一方で、参考となる前例がないゆえのリスクも存在します。
ファーストペンギンとなるには、ベンチマークのような地道な活動や、積極的な情報収集が大切です。過去の成功事例も参考にしつつ、意欲的な姿勢・意識のもとで事業展開を進めていきましょう。
参考:
ファーストペンギンとは?そのメリットやデメリットについて解説する | オンライン研修・人材育成 – Schoo(スクー)法人・企業向けサービス
ファーストペンギンとは 意味/解説 – シマウマ用語集
ファーストペンギンとは | 人事用語集・辞典 | 人事のプロを支援するHRプロ
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