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OJTとは?メリットや即戦力を育てる効果的な進め方を解説

OJTとは、新入社員に対し業務に必要なスキルを習得させる教育法です。即戦力となる人材を早期育成できるため、生産性の向上と社員のモチベーションアップにつながります。

ただし、OJTの実施方法やトレーナーの選定を誤ると、新入社員は与えられた業務をこなすだけにとどまってしまい、成果を出すまでには成長しません。OJTを効果的に実施するには、目的や意義を明確にすること、優秀なトレーナーを選定することが重要です。

今回の記事では、OJTのメリットや即戦力を育てるための効果的な進め方を解説します。OJTの計画を策定する人事担当者やOJTトレーナーの方は、ぜひ参考にしてください。

OJTとは

OJTとは「On-the-Job-Trainig」の略で、現場での業務を通じて知識やスキルを計画的に教える教育法です。

OJTの起源は第一次大戦時のアメリカにあります。大戦勃発により、造船所に大量の職人が補充された際、現場で業務を進めながら技術を習得する方法として編み出された「4段階職業訓練法」がOJTの始まりだといわれています。

日本でOJTが広く用いられるようになったのは高度経済成長期です。人材の早期育成と生産性の向上を目的とした教育手法として、OJTは日本企業に広く浸透していきました。

厚生労働省が令和5年に行った調査によると、約6割の企業が計画的なOJTを実施しているとの結果が出ており、現代においてもOJTはスタンダードな教育法として用いられていることがわかります。

出典:厚生労働省 令和5年度「能力開発基本調査」

OJTと比較される教育手法

OJTと比較される教育手法に「OFF-JT」「メンタリング」「SD」があります。それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

OFF-JT

OFF-JTとは、座学によって業務に関する知識を学ぶ手法です。社外講師による集団講習が一般的ですが、書籍やインターネットを通じた学習もOFF-JTに該当します。

業務を一時離れて学習に集中することで、体系的かつ専門的な知識を修得できる点がOFF-JTのメリットです。

OJTとOFF-JTの違いやそれぞれのメリット・デメリットについては、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:OJTとOFF-JTの違いとは?メリットとデメリット、活用法についても解説

メンタリング

メンタリングとは、年齢や立場の近い社員が「メンター」として新入社員をサポートする教育法です。教育係がつく点はOJTと共通しているものの、目的が大きく異なります。

OJTは業務に関する技術習得が目的ですが、メンタリングは対話を通じて新入社員の主体性を養い、精神的なケアを行うことが第一命題となっています。

SD(自己啓発)

SDは「Self-Development」の略称で、自己啓発を意味します。社員が自発的に社内外のセミナー出席や書籍、インターネットで学習することで知識やスキルを高める手法です。

社員自身が学習方法や計画を考えるため、自分のペースで能力を高められる点がSDの大きなメリットです。

OJTを実施する目的

OJTを実施する主な目的は以下の3つです。

  • 即戦力となる人材の育成
  • 定着率の向上
  • トレーナーのスキルアップ

それぞれ詳しく解説します。

即戦力となる人材を育成する

OJTの最大の目的は、即戦力となる人材を早期育成することです。研修や講義は、体系的な知識を得るのには役立ちますが、その知識をすぐに実務に落とし込むことはできません。

一方、OJTでは業務に必要な知識やスキルを効率的に学べるため、新入社員は早期に実務で活躍できる力を身につけられます。

単に技術を修得するだけではなく、業務の目的や背景をメンターから直接学ぶことで、実務への理解が深まります。

単に教えられた業務をこなすのではなく、業務を深く理解し、能動的に業務へ取り組む人材を育成できる点もOJTの大きなメリットです。

職場への定着率を向上させる

新入社員の定着率を向上させることもOJTの目的の一つです。新卒の社員は、組織になじめるか、業務をこなせるかといった不安を抱いています。そのため、自信を失うと早期離職してしまいかねません。

OJTによるスキルの早期習得は、新入社員にとって大きな自信につながります。また、教育係に気軽に相談できる環境で、安心して業務に取り組めるため、定着率の向上が期待できます。

トレーナーのスキルアップのため

OJTはトレーナー(教育担当者)のスキルアップにも役立ちます。具体的には、以下のような効果が期待できます。

  • 業務の意義や背景を新入社員に説明することで、教育担当者自身も業務を見直す機会を得る
  • 理解度が低い、反抗心が強いなど、指導が困難な新入社員の教育を通じて、高いコーチングスキルを修得する
  • 教育をしながら自分自身の業務をこなすため、タイムマネジメントスキルが上がる

OJTのトレーナーになることで得られるヒューマンスキルやマネジメントスキルは、経営幹部に必要不可欠な能力です。

次世代のリーダーとなる優秀な人材に教育係を任せると、さらなるスキルアップが期待できるでしょう。

OJTを行う前にすべきこと

OJTは実務に直結するスキルの習得に有効な教育法です。しかし、無計画に行うと効果が出ないだけではなく、新入社員に不信感を抱かせてしまいかねません。OJTを行う前に行うべきことは以下のとおりです。

  • OJTを実施する目的を明確にする
  • OJTを実施する目的や意義を周知する
  • トレーナーを育成する
  • トレーナーを選定する

それぞれ詳しく解説します。

OJTを実施する目的を明確にする

OJTを実施する際には、目的を明確にすることが重要です。業務に必要なスキルや組織が求める理想の人物像を整理し、達成目標と期間を決めて教育計画書を作成しましょう。

教育計画書により目的と期間を明確にすると、達成すべきことがわかりやすくなります。教育を受ける新入社員のモチベーションアップにつながるだけではなく、トレーナーが教育の進捗状況を正確に把握、評価するためにも有用です。

OJTを実施する目的や意義を周知する

計画的なOJTを行うためには、既存社員にOJTの目的や意義を理解してもらう必要があります。綿密な教育計画を立てたとしても、現場の社員がOJTの重要性を理解していなければ、単なる業務の一貫としてこなすだけとなり、効果的な人材育成にはつながりません。

OJTをなぜ行うのかや意義について説明する際には「現場にどのようなメリットがあるのか」という観点をもつことが重要です。

現場によっては、新人教育の重要性は理解しているものの、多忙と人材不足により教育に対して消極的な姿勢を示すことがあります。

「新人が育てば休暇が取りやすくなる」「〇〇の作業を任せられるようになり負担が減る」など、具体的なメリットを提示し、理解と協力を得られるようにしましょう。

トレーナーを育成する

トレーナーの育成もOJTを成功させるために必要不可欠なステップです。業務をこなせる社員が、必ずしも業務内容を適切に教えられるとは限りません。新入社員の意欲や習熟度に合わせて適切な指導をするには、コーチングスキルが必要です。

コーチングスキルの低いトレーナーに教育を任せると、効果が出ないだけではなく、トレーナー自身のストレスになってしまう危険性があります。

まずはOJT研修を行い、トレーナーにOJTの心構えや指導法などを修得させることから始めましょう。OJTのマニュアルを作成し、トレーナーに配布するのも有効な方法です。

OJTの実施に関するスキルを身につけることで、トレーナーは自信をもって教育に取り組めます。また、OJTの内容のバラつきが少なくなり、全体の進捗状況をある程度揃えられる点もトレーナーを育成するメリットです。

トレーナーを選定する

OJTでは新入社員一人ひとりにトレーナーがついて教育を行います。そのため、トレーナーの選定はOJTの成否に大きな影響を与えます。

しかし、単に指導能力が高いというだけでトレーナーを選ぶことは望ましくありません。トレーナーと新入社員の相性も重要であるためです。

たとえば、世話好きなトレーナーがいるとします。自立心の高い新入社員の場合、このトレーナーの教育は過干渉に感じられてしまうおそれがあります。反対に、仕事に対する不安感が大きく、手厚く指導してほしいという新入社員にとっては、理想的なトレーナーとなるでしょう。

新入社員のスキルや適性に合ったトレーナーを選定することで、OJTの成果は大きく上がります。また、相性の良いトレーナーの存在は新入社員に安心感を与え、早期離職を防ぐ効果も期待できます。

OJTにおけるトレーナーの重要性や育成方法に関しては以下の記事をお読みください。

OJTの4ステップとは

OJTは以下の4つのステップから構成されます。

  1. Show(やってみせる)
  2. Tell(説明・解説する)
  3. Do(やらせてみる)
  4. Check(評価・指導をする)

段階的かつ計画的に教育を行うことで、必要なスキルを効率的に習得できます。各ステップにおいて行うべきことと注意点を詳しく見ていきましょう。

ステップ1:Show(やってみせる)

まずは、トレーナーが実際に業務を行うところを新入社員に見せましょう。実務の見学を通じて、新入社員は業務の全体像や注意点を把握できます。

また、業務をしている様子を動画に記録しておくと反復学習に役立ちます。

ステップ2:Tell(説明・解説する)

前ステップで見せた業務についての説明、解説をします。業務の手順だけではなく、なぜその業務を行うのか、目的と背景を理解してもらうことが重要です。

仕事をする根拠や意味に納得できると、業務に対するモチベーションが上がり、能動的な姿勢が身につきます。

ステップ3:Do(やらせてみる)

業務の見学と解説を終えたら、いよいよ実際に業務をしてもらいます。新入社員自身の理解度を把握するため、トレーナーは手を出さずに見守りましょう。

ステップ4:Check(評価・指導をする)

最後に、行った業務に対して評価や指導をします。できた点はしっかり褒めることで、新入社員のモチベーションは大きく上がります。

できていない点については、失敗した理由や改善点を具体的に指導しましょう。指導の際には、失敗を責めるような言動は避けてください。新入社員を萎縮させてしまい、さらなる失敗や早期離職につながるおそれがあるためです。

新入社員が仕事への意欲を保てるよう、メンタル面のフォローを行うことも重要です。

OJTの効果を高める方法

OJTの効果をさらに高めるためには、定期的なフィードバックやOFF-JTの併用が有効です。具体的な方法を以下に紹介します。

きめ細やかなフィードバックを行う

1on1によるきめ細やかなフィードバックの実施は、OJTの効果を高めるのに最も効果的な施策です。

フィードバックでは、現時点でのパフォーマンスを評価し、維持すべき点、改善すべき点を指導します。

単なるダメ出しにとどまらないよう、褒めるべきところは褒め、具体的な目標を設定することで、新入社員のモチベーションを高められます。

また、新入社員は仕事や組織に慣れておらず、悩みや不安を抱えていることも少なくありません。1on1の際にメンタルケアを行い、パフォーマンスを維持することもトレーナーの重要な役割です。

OJTとOFF-JTを組み合わせる

OJTとOFF-JTを組み合わせると、教育の成果は大きく上がります。OJTは実地的なスキルの習得に向いている反面、論理的、体系的な知識を学ぶには向いていません。

一方、OFF-JTでは座学による学習を通じて、実務では知りえない専門的な知識や新しい視点を身につけられます。

OJTで経験したケーススタディをOFF-JTでディスカッションする、OFF-JTで獲得した知識をOJTで活用するなど、双方の教育法を連動させることで、業務の理解度やモチベーションの向上を図れます。

効果的なOJTのためには社員の適性把握が重要

OJTは実戦を通じて即戦力となる人材を育成できる教育手法です。しかし、目的や意義が不明確であったり、トレーナーの選択を誤ったりすると、思うような成果は得られません。

OJTの効果を高めるためには、指導力が高いことに加えて、新入社員と相性の良いトレーナーを選定することが重要です。また、1on1による定期的なフィードバックを行い、新入社員の性格に合った指導やメンタルケアを行いましょう。

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