用語集

休日出勤とはどんな制度?休日出勤の種類や出勤手当の計算方法など

休日出勤の扱いは種類によって異なります。本記事では休日出勤の定義や休日の種類、休日出勤手当の計算方法などを詳細に解説していきます。

休日出勤とは

休日出勤とは、契約上休日(労働義務のない日)となる日に出勤することです。

休日は「法定休日」と「法定外休日」の2種類あります。定義やルールが異なるので、詳細を見ていきましょう。

法定休日

法定休日は、労働基準法で規定されている「最低限取得する休日」です。

労働基準法第35条で下記の通り規定されています。

【引用】
使用者は、労働者に対して、毎週少なくとも一回の休日を与えなければならない。

前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。

http://www.koukirou.or.jp/users/webmaster/shiryo/kijunhou.PDF 

36協定とは

法定休日の出勤は原則違法ですが、36協定を会社と従業員の間で結ぶことではじめて可能になります。

36協定とは、労働基準法第36条に基づいて規定される労使協定です。

【引用】
第36条(時間外及び休日の労働)

使用者は、当該事業上に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合の、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者とも書面による協定をし、これを行政官庁に届け出た場合においては、第32条から第32条の5まで若しくは第40条の労働時間(以下この条において「労働時間」という。)又は前条の休日(以下この条において「休日」という。)に関する規定にかかわらず、その協定で定めるところによって労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる。

ただし、坑内労働その他命令で定める健康上特に有害な業務の延長は、1日ついて2時間を超えてはならない。

http://www.koukirou.or.jp/users/webmaster/shiryo/kijunhou.PDF 

法定外休日

法定外休日は、労働基準法では定めされておらず、企業側が独自に定めた休日です。

たとえば、土日休みの場合、日曜日を法定休日とすると、土曜日は法定外休日になります。

法定外休日の出勤も休日出勤とみなされます。なお、労働基準法では法定休日を週に1日設ければよいので、法定外休日を定めていない企業も存在します。

従業員への周知

休日出勤の規定については従業員へきちんと周知する必要があります。労働基準監督署に提出した36協定について従業員に周知しないと、労働基準法第106条に違反します。

【引用】
第106条(法令規則の周知義務)

使用者は、この法律及びこの法律に基いて発する命令の要旨並びに就業規則を、常時各作業場の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法によつて、労働者に周知させなければならない。

② 使用者は、この法律及びこの法律に基いて発する命令のうち、寄宿舎に関する規定及び寄宿舎規則を、寄宿舎の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法によつて、寄宿舎に寄宿する労働者に周知させなければならない。

http://www.koukirou.or.jp/users/webmaster/shiryo/kijunhou.PDF

違反したら30万円以下の罰金が科されます。オフィス内の掲示板・作業場の共有スペースなど従業員の視界に入りやすい場所に掲示するようにしましょう。

休日出勤の割増賃金

休日出勤によって規定された労働時間を超過する場合、「割増賃金」が発生します。労働基準法では、「週あたり40時間」「1日あたり8時間」が法定労働時間です。

仮に、1日8時間労働で、週休1日なら、週あたりの労働時間が「8時間×6日=48時間」となるため、割増賃金がもらえます。

休日出勤における割増賃金は、「法定休日」と「法定外休日」でそれぞれ割増率が異なります。法定休日なら1.35倍、法定外休日なら1.25倍を1時間あたりの賃金額に乗じます。なお通勤手当や住宅手当などの各種手当は1時間あたりの賃金額に含まれないので注意してください。

休日出勤で支払う出勤手当の計算方法

休日出勤で支払う出勤手当の計算方法について、手順を詳細に確認していきましょう。

法定休日

法定休日に出勤した場合の手順を解説します。

①基礎時給の計算

月額制の場合、下記の計算式で基礎時給を算出します。

基礎時給(1時間あたりの賃金)=月給÷1ヵ月平均所定時間(1ヵ月あたりの平均労働時間)

②割増率を乗じる

法定休日の場合、割増率は1.35倍なので、

基礎時給×1.35=法定休日における割増賃金の時給

です。

たとえば、基礎時給が3,000円で1日8時間労働の場合、

1日あたりの賃金:3,000円×8時間=24,000円

法定休日の割増賃金額:24,000円×1.35=32,400円

となります。

法定外休日

計算手順は法定休日と同じですが、法定外休日の割増率は1.25です。

法定外休日では、週あたりの労働時間が40時間を超えた場合のみ割増賃金が発生します。40時間を超えない際は、通常出勤と同じ扱いになり、割増賃金は発生しませんので注意してください。

代休と振替休日の扱い

「代休」と「振替休日」は、休日出勤になるか否かで扱い方が異なります。

代休

代休とは、休日出勤の代わりに他労働日を休日にあてることです。代休を取得しても、勤務日は休日出勤扱いですので、割増賃金が発生します(対象割増率1.35%)

なお実際は、代休取得による調整的相殺で、割増分の差額(1.35-1=0.35)の支払いで足ります。

振替休日

振替休日は、事前に休日と労働日を入れ替え、労働日を休日に変更することです。事前に申請を行って入れ替える点が代休と異なります。振替休日では割増賃金は発生しません。休日と労働日が事前に入れ替わっているため、休日出勤とカウントしないのです。

代休か振替休日によるものか正確に把握しておかないと、給料金額に違いが生じますので、注意してください。

雇用形態による違いは?

正社員のみならず、すべての雇用形態において休日出勤は適用されます。

パート、アルバイト、派遣社員、契約社員の場合も、1日8時間、週40時間の労働時間を超えた場合は、労働基準法に基づいた割増賃金が支払われます。

正社員で「裁量労働制」や「フレックスタイム制」が敷かれていても、休日出勤は法律に基づいて適用されるので安心してください。

管理職には休日出勤手当が支給されない

「管理監督者」には、労働基準法の労働時間、休憩、休日に関する規定が適用されません。そのため休日出勤手当も支給されず、通常の残業と同様に扱われます。労働基準法における管理職は「管理監督者」として、下記の通り定義されています。

  • 監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
  • 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けた者

「監督若しくは管理の地位にある」という文面より、経営者と一体的な立場で管理・監督の仕事に従事している必要があります。賃金面でも、一般従業員よりは高くないといけません。役職・肩書だけの名目上管理職は、管理監督者ではないので、一般従業員と同様に休日出勤手当が適用されます。

参考:Q&A 労働基準法の「管理監督者」とは?

休日出勤が発生しやすい場面

休日出勤がないに越したことはありませんが、「繁忙期」や「研修日」には休日出勤が適用されるケースが多いです。

繁忙期

繁忙期は業務量が多いため、上司から休日出勤の命令がなくとも、出勤せざるを得ない状況であれば休日出勤としてカウントされます。この場合、出勤が必要である事情を証明する必要があるので、業務内容を証明できる資料・データを残しておきましょう。

研修日

従業員全員が参加する研修である場合、研修日が休日と重なることもあります。参加必須の研修は、休日出勤としてカウントされます。任意参加の研修だと、休日出勤扱いとはならないので注意してください。

休日出勤手当が支給されていない場合は?

休日出勤をしたにも関わらず、出勤手当が支給されていない場合は、会社に対して必ず手当を請求しましょう。休日出勤した従業員に対して手当を支給しないと、企業側は労働基準法違反となります。

請求の方法は下記の2つです。

  • 会社に対して直接請求する
  • 残業代請求を専門にする弁護士に依頼する

会社に対して直接請求する

まずは会社に対して出勤手当を請求しましょう。しかし通常の郵便だと、請求書の送付が証明できません。悪質な企業だと「請求書を受け取っていない」と主張する可能性もあります。そのため「配達証明付き内容証明郵便」を利用してください。郵便局が送付元・送付先・郵便物の内容をそれぞれ証明してくれますし、企業側は配達の事実を否定することができません。出勤手当の請求書を確実に企業へ郵送することが可能です。

残業代請求を専門にする弁護士に依頼する

専門弁護士に書類作成や請求代行を依頼するのも一つの方法です。労働基準法に基づいた正確な出勤手当の計算を行ってもらえますし、仕事が忙しくても確実に話を進められます。

また、企業側も弁護士が対応している事実を知れば、訴訟を起こされないよう誠実に対応するケースが多いです。

残業代請求を専門に扱う弁護士の多くは、完全成功報酬制を採用しています。もし失敗したら弁護士に費用を支払う必要はありません。

ただ、前払い制のところも存在します。もし依頼するなら、費用形態はあらかじめしっかり確認しましょう。

まとめ

休日出勤は、法定休日・法定外休日、振替休日や代休などによって扱われ方が異なってきます。正しく把握しておかないと、出勤手当の支払い等でトラブルになりかねません。また、36協定の締結や労働規約の周知など、企業側がしかるべき対応をとっているか確認しておきましょう。労働基準法に違反している場合は、労働基準監督署への相談も忘れずに行ってください。

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