エンゲージメントサーベイは、社員の状態を可視化し、離職防止や組織改善につなげる重要な人事施策ツールとして多くの企業で導入が進んでいます。
しかしその一方で「本音が集まらない」「やりっぱなしで終わる」「効果を感じにくい」といった失敗事例も少なくありません。
実際、サーベイの実施を形骸化させてしまう企業の多くは、運用や仕組み化に課題を抱えています。
本記事では、エンゲージメントサーベイの代表的なデメリットと発生する背景を整理し、失敗を回避するための具体策をわかりやすく解説します。
導入済み企業は改善のヒントに、今まさに導入を検討している企業は効果的に運用するための手引としてご活用ください。

エンゲージメントサーベイのデメリット6選
エンゲージメントサーベイは組織改善のために有効なツールですが、正しい設計と運用を行わなければ十分な効果を得られません。
エンゲージメントサーベイが抱える主なデメリットは次の6つです。
- 実施目的が不明確だと形骸化しやすい
- 導入・運用コストが高い
- 匿名性の限界により社員が本音を出しづらい
- データが主観的で分析が難しい
- やりっぱなしになりやすい
- 質問形式や頻度によっては社員の負担になる
それぞれ解説します。
実施目的が不明確だと形骸化しやすい
エンゲージメントサーベイの大きなデメリットは、実施目的が曖昧なまま導入すると形骸化しやすい点です。
目的が設定されていないサーベイは「離職率の改善」「管理職のマネジメント改善」「心理的安全性の向上」などの経営課題と結びつかず、表面的なアンケートで終わりやすくなります。
さらに、サーベイの目的が社内に共有されていない場合、社員は「なぜ回答する必要があるのか」を理解できず、低い回答率や形だけの回答を招くことがあります。その結果、サーベイをやること自体が目的化してしまい、本来の改善効果を得られません。
導入・運用コストが高い
エンゲージメントサーベイは、システム利用料だけではなく運用にかかる人件費も発生するため、結果的にコストが高くなりやすいデメリットがあります。
特に自社開発や外部コンサルティングを併用する場合、初期費用だけで数百万円規模となる例も少なくありません。
さらに、調査票の設計、回答管理、結果分析、レポーティング、施策検討といった一連のプロセスに人事部門の工数が割かれます。これにより、本来の人事業務を圧迫し、「運用負担が重く継続できない」という課題に直面する企業も多く見られます。
コストは「金銭的負担」だけではなく「人的リソースの圧迫」という形でも表れます。特に中小企業では専任担当者を置けないケースもあり、導入したものの社内運用が追いつかないまま停滞してしまうことが典型的な失敗パターンです。
匿名性の限界により社員が本音を出しづらい
エンゲージメントサーベイには「匿名性の限界」という構造的なデメリットがあります。
形式上は匿名調査であっても、部署別のスコア表示や年齢・職種などの属性入力が求められることで、従業員が「実際は個人を特定できるのでは」と感じやすい仕組みになっています。
匿名性への不信感がある状態では、社員は評価や人間関係への影響を恐れ、本音を隠した回答を選びがちです。
とくに日本企業は上下関係や同調圧力が強く、否定的な回答を避けたり、平均値に合わせる「無難な回答」が増えやすい傾向があります。結果として、
- 数値は高いのに現場は疲弊している
- スコアは悪くないのに離職が止まらない
- 自由記述に本音が書かれない
といった事態が発生しやすくなります。
サーベイ結果が実態を反映していないと、施策の方向性を誤ったり、データの信頼性そのものが揺らいでしまったりする点がデメリットです。
データが主観的で分析が難しい
エンゲージメントサーベイは多くの場合「5〜7段階評価のリッカート尺度」を用いた心理測定であり、回答が数値化されていても、本質的には主観データです。そのため、同じ質問でも人によって基準が異なり、結果の解釈を誤りやすいという分析の落とし穴があります。
たとえば「仕事にやりがいを感じている」という設問に対し、
- Aさん:やりがい=成果や評価
- Bさん:やりがい=人間関係や働き方
- Cさん:やりがい=社会貢献性
のように定義が異なるケースは珍しくありません。表面的なスコアだけで評価してしまうと「改善すべき本当の要因」が見えなくなります。
さらに、部署・職種・雇用形態・年齢層などを考慮せずに平均値だけで判断すると、組織の特性や業務負荷を反映しきれず、誤った打ち手につながるデメリットがあります。
結果として、
- 原因分析が浅くなる
- 打ち手が抽象的で現場に響かない
- 改善の優先順位が定まらない
といった問題が生じやすくなります。
やりっぱなしになりやすい
エンゲージメントサーベイは、実施後のアクション不足によって失敗しやすいデメリットもあります。調査結果を収集しただけで改善につながらなければ、
- アンケートのためのアンケートでは?
- 現場の課題が放置されている
- 結局、何も変わらない
といった不信感が生まれます。
この状態が続くとサーベイへの信頼が低下し、回答率の悪化や本音回答の減少を招く原因となります。結果的に、組織改善どころかエンゲージメントを下げてしまうリスクがある点は見過ごせません。
質問形式や頻度によっては社員の負担になる
エンゲージメントサーベイのデメリットとして見落とされがちなのが、設問数や実施頻度による負担増で逆効果を招くリスクです。
サーベイは本来、従業員の状態を把握し組織改善につなげるための仕組みですが、1回の設問が多すぎる(50〜100問以上)ケースや、月次・隔週など過度な頻度で実施するケースでは、社員の心理的・時間的コストが増大します。
その結果、
- 回答が面倒になり形式的な回答や未回答が増える
- 社員が「監視されている」と感じ心理的安全性がむしろ低下する
- 現場から「サーベイ疲れ」が発生する
といった問題が起こります。
とくに、業務多忙期やプロジェクト納期と重なるタイミングでの実施は現場の反発を招きやすく、「人事が現場を理解していない」と不信感を強める原因にもなるため注意が必要です。
エンゲージメントサーベイのメリット5選
エンゲージメントサーベイは正しく導入・運用することで、次のようなメリットが得られます。
- 社員のモチベーションや満足度を定量的に把握できる
- 経営層と現場のギャップを明確にできる
- 組織変革や人材開発の方向性を検討する材料になる
- 社員の声を反映した職場づくりがしやすくなる
- 人事施策の精度を高められる
それぞれ解説します。
社員のモチベーションや満足度を定量的に把握できる
エンゲージメントサーベイを導入する最大のメリットは、従業員の従業員のモチベーションや満足度などを、感覚ではなくデータで把握できることです。
これらはアンケートなしには見えにくい領域ですが、サーベイの実施により、離職リスクや組織崩壊の兆候を早期に把握できます。
とくに、部署別・属性別などでスコアを分解すると、「どの職場で問題が発生しているのか」「課題は人間関係/育成/報酬/マネジメントのどこか」など、打ち手を検討するための根拠を得ることが可能です。
サーベイを導入していない企業の多くは、人事施策を勘と経験に頼りがちですが、エンゲージメントを定期測定することで、人材マネジメントをデータドリブンに進められる点は大きなメリットといえます。
経営層と現場のギャップを明確にできる
エンゲージメントサーベイは、経営層の認識と現場社員の実態との間に存在するギャップを明確にできる点が大きなメリットです。
経営層が「制度や福利厚生は整っている」と判断していても、現場では「評価が不公平」「上司とのコミュニケーション不足」「仕事の裁量がない」などの不満が蓄積しているケースは少なくありません。
特に、サーベイ結果を役職別に比較するとこのギャップが表面化しやすく、管理職層は高評価でも一般社員層は低評価という構図がよく見られます。
こうした構造的なズレを可視化することで「経営だけが満足している状態」を防ぎ、従業員体験(Employee Experience)を改善する具体的な議論につなげられます。
組織変革や人材開発の方向性を検討する材料になる
エンゲージメントサーベイで得られるデータは、従業員の満足度やチーム状態を把握するだけではなく、組織変革や人材戦略の方向性を検討する材料になります。
調査ではマネジメント、評価制度、成長機会、人間関係など項目別にスコアを分解できるため、課題の優先順位を明確にしやすく、打ち手の検討に直結します。
たとえば、
- 給与不満は高いように見えるが、実際の離職理由は評価制度の不透明さだった
- モチベーション低下の要因は待遇ではなく、上司とのコミュニケーション不足だった
というように「見せかけの原因」ではなく「真の原因」を特定し、人事制度改革・マネジメント研修・キャリア支援などの具体的なアクションにつなげやすい点が強みです。
社員の声を反映した職場づくりがしやすくなる
エンゲージメントサーベイは、従業員の声を定量的かつ体系的に把握できる点がメリットです。個別のヒアリングでは拾いにくい組織全体の課題や、現場で表面化していない不満を早期に察知できます。
適切に匿名性を確保し、結果を丁寧にフィードバックしていくことで「安全に意見を伝えられる環境」が整い、社員が建設的な意見を出しやすくなります。
その結果、従業員の声を反映した職場改善が進めやすくなるだけではなく、エンゲージメントや心理的安全性の向上にもつながるでしょう。
人事施策の精度を高められる
エンゲージメントサーベイは、人事施策の効果を客観的に検証できるため、改善の精度が高まる点がメリットです。サーベイを行わずに人事施策を進めると、「取り組んでいるが成果が見えない」「現場に響かない施策が多い」といった状態に陥りやすくなります。
一方、サーベイ結果を活用すれば、次のように打ち手を検証しながら改善を進める運用が可能です。
- 評価制度の見直し:納得感が低い部署を特定し、評価基準の透明性を高める対策を優先
- マネジメント育成:上司との関係や心理的安全性のスコアが低い部署に対し、1on1やフィードバック研修を重点的に実施
- オンボーディング改善:入社1年未満のスコアを個別に確認し、定着支援や育成プロセスの補強に活用
- 離職防止:エンゲージメントの低下傾向が見られる層を早期に把握し、配置転換やキャリア支援につなげる
このように「施策が本当に効果を出しているか」をデータで判断できることが大きな利点です。勘や憶測に頼らず、優先度の高い課題に資源を集中できるため、人的資本の最大化にも直結します。
エンゲージメントサーベイのデメリットをカバーする方法
エンゲージメントサーベイには「形骸化しやすい」「匿名性の不安で本音が集まらない」「やりっぱなしになる」などのデメリットがあります。
しかし、これらは次のように仕組みと運用を整えることで十分に解消可能です。
- 実施の目的とKPIを明確に設定する
- 匿名性を担保し社員の信頼を確保する
- 分析設計とフィードバック体制を仕組み化する
ここからは、エンゲージメントサーベイのデメリットをカバーする方法について具体的に解説します。
実施の目的とKPIを明確に設定する
エンゲージメントサーベイは「実施すること自体」が目的化すると失敗します。前述したとおり、目的が不明確なまま調査だけを続けると形骸化し、社員の不信感を招く原因となります。
これを防ぐためには、まず導入前に目的と測定指標(KPI)を明文化し、経営層と現場の認識を揃えることが欠かせません。
具体的には、目的は3つまでに絞るのが現実的です。たとえば、次のように経営課題と結びつけて設定すると、サーベイ結果を改善施策につなげやすくなります。
| サーベイ実施の目的例 | 測定指標(KPI) |
|---|---|
| 離職率の改善 | 離職意思スコア・定着率・早期離職率 |
| マネジメント改善 | 上司への信頼スコア・1on1実施率・フィードバック満足度 |
| 組織状態の可視化 | エンゲージメント総合スコア・心理的安全性・部署別ギャップ |
さらに重要なのは、測定したあとにどう活かすのかまで設計することです。事前に「分析の観点」「改善アクションのルール」「結果共有の方法」を決めることで、サーベイを運用基盤にできます。
- 目的とKPIを設定する
- 経営層・人事・現場責任者で合意する
- 年間運用計画に「分析ミーティング」と「改善アクション」まで組み込む
目的設計がされているサーベイは定着率が高く、改善サイクルを回しやすい点が特徴です。
匿名性を確保して本音の回答を引き出す
エンゲージメントサーベイが機能しない最大の理由は、回答の匿名性に対する不信感です。デメリットの章でも触れたとおり、社員が「個人が特定されるのでは」と感じると本音を回答しなくなり、データの精度が一気に低下します。
匿名性を確保するには、次のような取り組みで信頼を担保することが重要です。
| 匿名性を担保するポイント | 具体策 |
|---|---|
| 技術面 | 外部ツールを利用する個人情報に自動でマスキングをかける部署単位の最低回答数を設定する |
| 運用面 | 個人を特定しない分析ルールを明文化する人事評価には利用しないと宣言する |
| コミュニケーション面 | 目的と利用範囲を事前に説明する「社員の声を改善に使う」姿勢を示す |
とくに重要なのは、事前説明(プレ告知)の質です。「何のために実施するのか」「個人は特定しない」「評価には使わない」「改善に使う」と明確に説明することで、社員の協力姿勢は大きく変わります。
逆にこれを怠ると、初回から回答の質が下がり、サーベイが失敗する原因となります。
分析設計とフィードバックの体制を仕組み化する
エンゲージメントサーベイは、集計して終わる運用では効果が出ません。データを見たあとに分析・意思決定・改善実行までつながる仕組みがないと、形式的な「年次イベント」に陥ってしまいます。
改善するには、次のように分析とフィードバックのプロセスを仕組み化することが重要です。
- 分析設計を決める:部門・職種・年代などで分解できるクロス集計設計を組み込み、課題の特定精度を高める
- モニタリング体制を整える:ダッシュボードや分析ツールを活用し、推移を継続的に確認できる状態にする
- フィードバックループを制度化する:結果を「経営会議 → 部署会議 → チームミーティング」の順に共有し、改善方針とアクションを各層で合意する
このように「見える化 → 共有 → 改善」の運用フローを固定することで、サーベイの精度と実効性が高まり、現場が主体的に改善に動けるようになります。
エンゲージメントサーベイ運用上の注意点
エンゲージメントサーベイは、実施方法を誤ると「負担が大きい」「現場の反発を招く」「形骸化する」といった運用課題が生じやすい調査です。
特に、実施タイミング・設問設計・結果の共有方法を適切に管理しないと、社員の回答態度やサーベイへの信頼性に悪影響を及ぼします。
具体的には次の3点に注意しましょう。
- 調査のタイミングと頻度を最適化する
- 結果の共有方法に配慮する
- 改善施策は段階的に実行する
ここでは、サーベイを継続的に活用するために押さえておくべき運用上の注意点を解説します。
調査のタイミングと頻度を最適化する
エンゲージメントサーベイは実施のタイミングや頻度を誤ると、回答率の低下や形式的な運用につながるリスクがあります。
たとえば、繁忙期や評価面談の直後に実施すると、仕事量や評価結果への不満がスコアに影響し、実態を反映しない偏った結果になることがあります。
また、頻度が高すぎると調査疲れが起こり「またアンケートか」という反発を招きやすくなります。
実務では年1〜2回の定点観測を基本としつつ、必要に応じて短いパルスサーベイを補助的に活用する設計が適切です。
結果の共有方法に配慮する
エンゲージメントサーベイは、結果の「扱い方」を誤ると社員の不信感を招き、逆効果になりかねません。
とくに注意すべきは、結果を経営層だけが握り込み、現場へ適切に共有しないケースです。このような運用を続けると、社員は「回答しても意味がない」「都合の悪い結果は隠されている」と感じ、回答の質が低下します。
結果共有では、数値の良し悪しを評価するのではなく、事実をオープンに開示し、次の改善ステップにどうつなげるかを示すことが重要です。
個人を特定できる情報は伏せつつ、部署別の傾向や課題テーマを整理し、「次の一手」を明確にした形で共有することで、社員の納得感と信頼を得られます。
改善施策は段階的に実行する
エンゲージメントサーベイの運用では、結果を受けていきなり大規模な改善策を進めないことが重要です。多くの企業が、サーベイ後に全社共通の大きな改革を急ぎすぎて失敗しています。現場の理解やリソースが追いつかず、結局は形だけの取り組みになってしまうからです。
効果を出すためには、改善施策を短期・中期・長期の3段階に分けて進める設計が必要です。
次のように現場で即実行できる小さな改善から着手し、成功体験を積み重ねながら組織全体に拡大していくことで、継続性と実効性を両立できます。
| 期間 | 目的 | 施策例 |
|---|---|---|
| 短期(1〜3ヶ月) | サーベイ結果をもとに、改善可能な現場課題にすぐ対応する | 1on1の不足やコミュニケーション不全の改善会議体の見直し情報共有の仕組みの整備 |
| 中期(3〜6ヶ月) | サーベイから判明した構造的課題を改善し、組織運営の質を高める | 評価運用の透明化マネジメント研修の実施オンボーディング改善育成プロセスの整備 |
| 長期(6ヶ月〜) | サーベイ結果を人材戦略に反映し、組織の基盤を整える | 人事制度改定キャリアパス整備次世代リーダー育成 |
段階的に施策を設計することで、サーベイ結果が「やりっぱなし」で終わらず、組織改善の実行プロセスへ確実につながる運用が可能となります。
エンゲージメントサーベイのデメリットを理解して効果的な運用を
エンゲージメントサーベイは、正しく運用すれば離職防止や組織改善、人材戦略の意思決定に役立つ重要なデータを得られます。
一方で「目的が曖昧なまま実施され形骸化する」「やりっぱなしで信頼を失う」「分析や改善が属人化する」といったデメリットも存在します。
重要なのは、設計・運用の仕組みを整えたうえで継続的に活用することです。
サーベイの効果を最大化するには、目的とKPIの明確化、匿名性の担保、分析・共有ループの仕組み化、改善行動までの落とし込みが欠かせません。
これらを運用に組み込めば、サーベイを「アンケートのためのアンケート」で終わらせず、経営と現場をつなぐ組織マネジメントの基盤として機能させることが可能です。
「ミキワメ ウェルビーイングサーベイ」は、離職リスクの見える化・課題の自動分析・改善アクションの提案までを一気通貫で支援するため、やりっぱなしや属人化を防ぎ、実効性の高い運用を実現できます。
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