現代の日本はストレス社会と言われています。学生は学校で同級生や先輩との関係がうまくいかなかったり、勉強で結果が出ずに悩んだりしています。
社会人は会社で上司からのパワハラに苦しんでいたり、労働環境の悪さから体調を崩したりしている方も少なくありません。
生きていくうえでストレスはつきものですが、そのまま放置していると心身共に病気にかかる恐れがあります。そのため、一人ひとりがストレスと向き合い、上手に対処することが重要といえるでしょう。
そこで本記事では、ストレス対処を考えるうえで覚えておきたいストレスコーピングについて、種類や実践方法などを詳しく解説していきます。
ストレスコーピングとは?
ストレスコーピングとは、ストレスを対処しようとする行為のことです。
アメリカの心理学者、ラザルスが提唱したことで認知され始めました。
人間はストレスを感じると、体が反応するようになっています。多少のストレスなら問題ありませんが、ストレスが大きくなると心身の健康を損ない、日常生活に支障をきたす恐れもあるでしょう。
そこで、健康を維持するための手段として、ストレスコーピングの実施が重要となってきます。
参考:ストレスコーピング | e-ヘルスネット(厚生労働省)
ストレスの内訳
ストレスコーピングを行ううえでは、ストレスがどういったものかを把握しなければなりません。
しかし、ストレスとは何かと聞かれ、詳しく説明できる人はそれほど多くはないでしょう。
何が原因でどのような流れでストレスが生じるのかを把握できれば、うまく対処できるはずです。
ストレスは、主に次の3つの要素から構成されています。
- ストレッサー
- 認知
- ストレス反応
それぞれ詳しく解説していきます。
ストレッサー
1つ目の要素は、ストレッサーです。
ストレッサーとは、ストレスの原因になっているものを指します。
生活の中で、ストレッサーが生じるきっかけは数多く存在します。例えば、学校や会社での人間関係です。
最近では特に人間関係が原因のストレスが多く、現代社会の問題の一つといえます。
他にも天候や公害物質などの外部環境が、ストレッサーとなりえます。大雨の中での通勤や、密室空間でのタバコの副流煙は、人によって不快の原因(=ストレッサー)となるでしょう。
認知
2つ目の要素は、認知です。
認知とは、ストレッサーによって刺激された状態のことです。
人間は様々なシチュエーションにおいて、外部からの刺激を認知します。例えば、冬の寒い日に薄着で外にいると、鼻水やくしゃみが出ます。これはストレッサーを身体が認知している状態で、外からの刺激に身体が反応しているのです。
他にも、友人や恋人と口論になった時にもストレッサーを認知します。
社会の中で人と関わりながら生きている以上、私たちは高い頻度でストレッサーを認知することになります。
ストレス反応
3つ目の要素は、ストレス反応です。
人間はストレッサーを認知すると、防御しようと身体が反応します。これがストレス反応であり、私たちの身に様々な症状を引き起こします。
ストレス反応には、主に心理的、身体的、行動的という3つの種類があります。
- 心理的:不安、怒り、イライラなど
- 身体的:動悸、頭痛、腹痛、肩こりなど
- 行動的:暴飲暴食、喫煙、アルコール依存など
これらの症状はストレス反応のサインなので、症状が重くならないよう、速やかな対処が求められます。
参考:ストレスコーピングとは?種類と具体的な方法や企業の取り組み方法を解説 | オンライン研修・人材育成 – Schoo(スクー)法人・企業向けサービス
ストレスコーピングの種類
ストレスは主に3つの要素から構成されていますが、ストレスコーピングにも種類があります。
大きく分けると、問題焦点型コーピング、ストレス解消型コーピング、情動焦点型コーピングの3つです。
それぞれのストレスコーピングの中でも細かい分類があるので、詳しくみていきましょう。
①問題焦点型コーピング
問題焦点型コーピングとは、ストレッサーそのものに働きかけて、ストレス自体を解消し解決を図ろうとするものです。
例えば、仕事が激務でストレスを感じている場合は、上司に仕事量を減らしてもらったり、会社を辞めたりすることで、ストレスの原因となるものから離れたり、遠ざけたりします。
他にも、パートナーとの関係がうまくいかずにストレスを感じている場合は、別居して距離を置いたり、一度別れたりすることでストレスを取り除けるでしょう。
このように、ストレッサーに対して直接働きかけるのが問題焦点型コーピングです。ただし、実行に移すことが難しいため、気軽に取り組めるアプローチとは言いがたい側面があります。
社会的支援検索型コーピング
ストレスを感じた時に、周りの人間に助けを求めるのも有効です。これを社会的支援検索型コーピングといい、問題焦点型コーピングの一つとして考えられています。
例えば、会社の上司とのトラブルが起きた際には、友人に愚痴や話を聞いてもらう人も少なくありません。
人に話すことでストレスを一人で抱え込まなくて済むため、心理的な負担が軽減できるメリットがあります。
問題焦点型コーピングは基本的に自ら解決しようとするものですが、自力で解決できない問題に対しては社会的支援検索型コーピングが有効です。
②ストレス解消型コーピング
ストレス解消型コーピングは、ストレッサーを感じたタイミングではなく、感じた後に解消させる方法です。
この方法は意識的ではなく、無意識のうちに行なっている場合が多いです。
誰しもストレス発散のために、ついついやってしまうことがありますよね。具体的な行動としては、以下が挙げられます。
- 身体に悪いとは思いつつも、夜にジャンクフードやお菓子を大量に食べてストレス解消を図る
- 休日に家に引きこもり、ひたすら映画鑑賞をして嫌なことを忘れる 内容は人それぞれですが、ストレスを忘れたり軽減したりしようと試みるアプローチを、ストレス解消型コーピングと呼びます。
ストレス解消型コーピングには、気晴らし型コーピングとリラクゼーション型コーピングの2種類が存在します。それぞれ詳しくみていきましょう。
気晴らし型コーピング
気晴らし型コーピングとは、ショッピングや美味しいものを食べるなど、自分の好きなことを通じてストレスを解消する方法です。
仕事で腹の立つことがあった場合、週末に友人と出かけてストレスを発散したいと思うのは自然な感情です。
すぐに実践可能なストレス解消法としておすすめですが、ストレスが溜まりすぎている場合、値段が高すぎる服を買ったり、高級料理を食べたい衝動に駆られたりと、歯止めがきかなくなる可能性があるのでご注意ください。
リラクゼーション型コーピング
リラクゼーション型コーピングとは、名前のとおりリラックスすることでストレス解消を図る試みです。
体操やヨガといったヒーリング効果の高い運動をすると、心が穏やかになります。毎日のルーティーンにしておけば、嫌なことがあった日でも落ち着いていられます。
他にも瞑想やアロマの香りなどでリラックスする方法も有効です。
③情動焦点型コーピング
情動焦点型コーピングとは、ストレッサーに働きかけるのではなく、ストレッサーに対する考え方や感じ方を変えるアプローチ方法です。
ストレッサーを対処しても問題解決に繋がらない場合において、情動焦点型コーピングが最適といわれています。 情動焦点型コーピングには、情動処理型コーピングと認知的再評価型コーピングの2種類が存在します。
情動処理型コーピング
情動処理型コーピングは、ストレッサーによる悲しさや傷付いた気持ちを誰かに話すことで解消する方法です。
自分の感情を口に出せば気持ちがすっきりするので、大きなストレス発散効果があります。
親しい友人や恋人に相談に乗ってもらうのがベストですが、周囲に話せる人がいない場合はカウンセラーへの相談を検討してみるといいでしょう。
認知的再評価型コーピング
認知的再評価型コーピングは、ストレッサーに対する見方や捉え方を変えるアプローチです。
例えば、仕事でミスをして上司に怒られた時に、自分の失敗を責めるのではなく、次は気を付けようと考えてみます。「今回は失敗したけど、大きな問題になる前に解決できたからOKだな」と思えれば、気持ちが楽になるでしょう。
また、広い視野で周囲を見渡してみれば、ミスをカバーしてくれた先輩や同僚の存在に気づき、恵まれた職場環境で働けていることを認識できるかもしれません。
このように、見方や捉え方を変えるだけで、ストレスを解消できる場合もあります。
ストレスコーピングの実践方法
ストレスコーピングの実践方法について、種類ごとに確認していきましょう。
問題焦点型コーピングの場合
まずは問題焦点型コーピングの場合です。
例えば、関係性が悪化している同僚と仕事を一緒にしなければならないケースを考えてみましょう。
このケースでは、ストレッサーが同僚といえるので、お互いに言いたいことを言い合って関係の修復を図れば、ストレス解消が可能です。
ストレス解消型コーピングの場合
次にストレス解消型コーピングのケースを考えてみましょう。
ストレス解消型コーピングには、気晴らし型コーピングとリラクゼーション型コーピングの2種類があります。
気晴らし型コーピングについては、仲の良い友人と旅行したり、カラオケに行ったりするのが有効です。
リラクゼーション型コーピングとしては、ヨガ教室に通ったり、自宅でアロマを楽しんだりする方法がおすすめです。
情動焦点型コーピングの場合
次に情動焦点型コーピングの場合です。
情動焦点型コーピングは、情動処理型コーピングと認知的再評価型コーピングの2種類に分けられます。
情動処理型コーピングでは、親しい人やカウンセラーに話を聞いてもらう方法が挙げられます。
また、認知的再評価型コーピングについては、自分で見方や捉え方を変えるだけでなく、本を読んで新たな考えを吸収するのもおすすめです。
まとめ
ストレスコーピングとは、ストレスをうまく対処しようと試みる行為を意味します。
大きく分けて3つの種類があり、状況に応じて使い分ける必要があります。
ストレスは誰しもが抱えるものですが、過剰にストレスを感じると心や身体を害してしまうため、適切なストレスコントロールが重要です。
ストレスコーピングを通じて心を整え、生き生きとした日々を過ごしていきましょう。
参考:ストレスコーピングとは?実践方法や具体例を精神科産業医がわかりやすく解説! | CHR発 well-being コラムWell be
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